控え目に甘く、想いは直線的
車の免許は持っていない。必要性を感じなかったから取得しようと思わなかった。

車ではないと行けない場所……確かにそういう場所もあるだろう。でも、探せば電車とバスを乗り継いで行けるのではないかと思う。


「免許は持っていませんが、バスとかで……」


「なら、迎えに行くから。あとで時間は連絡する」


私が言い終わる前に決定事項として言われてしまった。ありがたく受け止めておくことが無難かな。

何度も断るのも気が引けるし、ここは穏便に流すのがいいだろう。


「ありがとうございます」


「ありがた迷惑という顔だな」


「えっ? いえ、とんてもないです! 本当に助かりますし……」


「ぷっ! あはは、なんで焦ってるんだよ」


驚いた。部長がここで笑うなんて予想外だ。しかも噴き出してから大きな口を開けて笑った。

部長の笑いのツボがこんなところにあったとは、信じられない。


「おい、聞いてるか?」
< 85 / 224 >

この作品をシェア

pagetop