幸せ行きのチケット
並木君は、ただ黙って歩いている。

さっきよりは速度を落としてくれたからよかったものの、手は絶対離してくれない。

年下だけど、高校生の男子だ。

力は何倍も強いから抵抗できない。

「ねぇ、どこいくの?」

「イルカショー。」

一言だけ答えてまた黙ったまま。

ちょっと並木君は怒っているような感じがした。

イルカショーは、あと少しで始まるという時、やっと辿りつけた。

席はほぼ満席。

ちょうど空いていたところに座った。

並木君はただイルカを見つめている。

私自身、イルカは好きだったから、ショーを楽しんでから並木君と話してみようと思った。

祐輔と亜由美には悪いけど、終わったら連絡しよう。

イルカショーは始まり、可愛いイルカ達は気持ちよく泳いでいる。

なんの考えもなく、パッと周りを見た時だった。

私の目に映る光景は、これから楽に進むだけの道に、高い高い壁を一瞬のうちに作ってしまった。





祐輔と亜由美はそこにいた。


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