幸せ行きのチケット
携帯を見て、ベンチから立ち上がる。

ふと見たベンチの端っこに、何か文字が削られていた。

それは間違いなくあの人が書いた文字だった。

『友利〜〜〜大好きだぁ〜』

自然と笑みがこぼれる。

「いつの間に書いてたのよ…。」

指でゆっくりとなぞっていく。

少し涙がでそうだったので、私はその場から離れ、家へと向かった。




家に入ると父親は仕事に行く用意をしていた。

「友利。ごめんな、卒業式までいけないなんて。」

「いいよ。仕方ないもんね。………仕事頑張ってきて。」

「おう。行ってきます。」

「行ってらっしゃい。」

父親を見送り、朝食の用意をする。

といっても、パンと牛乳ですませるが…。

リビングに運び、食べようとした。

その前に私は、机の上にある紙と大きなアルバムのようなものを見つけた。

紙には、

『卒業おめでとう』

と書いてあった。

父の下手な字は昔から変わらない。

でも、すごく心がこもっているような気がして嬉しかった。


< 188 / 217 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop