草花治療師の恋文
第3章

「セイ!どう?」

「よくお似合いですよ。」


パーティーに参加するためドレスを着て、目一杯おしゃれをしたマーガレットがセイリンの前でクルッと回った。

マーガレットは10歳になり、父親のライザと共に公の場に出ることが増えた。

テンペスト家の当主になるのは男性のみと決まりがある中、跡継ぎは女のマーガレットのみ。

マーガレットが誕生してからずっと付きまとう問題だか、最近はその古い考えを改めようと言う意見も親族からちらほら出ている。

なぜなら、


「やぁ小さなお姫様。今日も愛らしいね。」

「クルガ叔父様!」


マーガレットの父ライザの弟クルガが、マーガレットの治療師としての才能を高く評価したからだ。

想記ができなくて逃げてばかりだったマーガレットだが、セイリンとの文通をきっかけに見る見る上達し、今では親族の子供たちの手本として教える側に立つようになった。

もちろん想記だけではなく、治療師としての勉学も自ら進んで取り組み、実際に治療を施したこともある。

クルガは、マーガレットの年齢に伴わない治療、想記を見て、頭の固いテンペスト一族の古株達に治療師としての才能は男女関係なく評価するべきだと発言したのだ。

それからライザも、マーガレットを公の場に連れ出すようになったのだが…。


「あまりはしゃぐんじゃない。今日は薬草堂の長も来るから、きちんとご挨拶するように。」

「はい、お父様。」


マーガレットはライザに言われると、先程までの子供らしい表情はなくなり、すっと静かな面持ちになった。

ライザは気が進まない様子で、セイリンが見てもわかる。

もちろん、マーガレットも気付いている。


「そんなに固くなることはないよ、マーガレット。一緒にいてあげるからね。」

「クルガ、お前はお前で挨拶があるだろう。」


ライザは不機嫌にクルガに注意した。


「わかってるよ。大丈夫だって。」


クルガは苦笑しながら答えた。

ライザはふんっと鼻で息を吐いた。

ライザとクルガは歳の離れた兄弟で、クルガは28歳とまだまだ若い。

社交パーティなどに出席すれば、たちまち令嬢に囲まれる。

そんなクルガと一緒に、マーガレットを並ばせるのがライザは嫌なのだろう。


「では、準備が整いましたので馬車に移動をお願い致します。」

「じゃあ行こうか。」


クルガはマーガレットをエスコートし、ライザと3人でパーティーに向かった。




しかしこのパーティーを境に、クルガはテンペスト家を訪問する事はほぼなくなり、マーガレットは屋敷にこもる日々がしばらく続く事になる。



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