白衣の王子に迫られました。
「大丈夫? 千穂」
香月君が心配そうに私の顔を覗き込んだのは、ICU の扉の前だった。
検査の結果、例の患者さんを一般病棟から移したのでその様子を見に来たのだ。
「うん、平気。香月君の出してくれた薬が効いたみたい」
「そう。よかったね。でも、まだここに入らないほうがいいんじゃない」
そう言われてハッとする。ただの食あたりだと思っていたから詳しい検査はしていないけど、もし、感染する類のウイルスだったりしたら、ICUの入室は避けたほうがいい。
「かも知れないね、じゃあ、香月君が診て来てくれる?」
「もちろん。……そんなこよりさ、森下のこと。ごめん、僕がふざけてあんなことしたからだよね。彼の誤解は解けた?」
「ううん。解けてないけど、もういいの」
「よくないでしょ、誤解されたままでいいわけ? ちゃんと分かってもらおうよ。診察していたってだけじゃ弱いと思うんだよね。でも、僕がゲイだからって言えば彼も分かってくれるでしょう。僕が話してこようか?」
香月君はそう言うけど、誤解を解くってことは、そう言うことになるんだ。私のために、カミングアウトはさせられない。
「だからいいんだって。もともと好きじゃなかったし、勝手に懐かれて迷惑してたし」
「うそ! じゃあ、なんでそんな悲しい顔してるのさ」
「してないって! ……ごめん、大きな声出して。仮眠室で少し休んでるね。他の先生たちにもそう言っておいて」
私は香月君に背を向けると、とぼとぼと歩き出した。