僕は、君が好きです。
泰詩が私を自分のコートの中に入れながら

またゆっくりと歩き出した。

泰詩のコートの中は温かくて…

微かにコロンの匂いがした。

なんか…すごくいい匂い…。

ずっと、こうしていたいよ…。

ずっとずっと…

一緒にいられたらいいのに…。

ずっとこのまま…

私の顔が急に熱くなってくる。

「真凛…」

「え?」

「俺も…雪の匂いが好きだよ。」

「……」

「昔から、雨の匂いとか雪の匂いとか

そういうのが何となく好きで…

誰かに言ったりした事とかなかったけど…

初めて…同じやつに会った。」

「同じ…?」

「うん…」

「…私もだ…。」

「何か…いいよな、そういうの…。」

「そういうの?」

「うん…

さっき、真凛が雪の匂いが好きって…

同じなんだって…

俺と似てるなって…

そしたらさぁ今まで色々悩んでた自分が

バカらしくなった。

俺は、悩まないでいいんだって…っ。

俺が好きなら、それでいいんだって…。」

泰詩がそう言いながら笑う。

そんな泰詩の笑い声を無性に

愛しく感じながら…

私はあはたの優しい笑顔を

コートの中で思い浮かべた。

「つまりは、まぁ…

ただそれだけ…なんだけど。」

泰詩がポツリと独り言のように呟いた時…

ポタ…

私の頬に大粒の涙がこぼれてきた。

「……」

「真凛?どうした?」

「…何でもない。」

「うん…。」

私は溢れてくる涙を拭った。

"ただそれだけ"

"私は、泰詩が好き"

ただそれだけでそれが全て…。

泰詩…

やっぱり泰詩は優しいよ。

そして"お人好し"だ。

私なんかよりずっと…。

だってこんな私を

まだ好きだなんて…。

たくさん、たくさん傷つけたのに…

ずっと助けてくれるんだよ?

私を見捨てずに好きでいてくれた。

それだけでスゴいよ…。

ずっと泰詩はそうだったよね。

いつもそうだったから…

全然気がつかなかったの…。

でも…ずっとずっと

本当の優しさを持っていた。

私は、ずっと…

あなたの強さに何度も何度も助けられた。
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