その手が暖かくて、優しくて
綾小路の陰謀
生徒会の会計係である金田金好は「アイドルおたく」だった。
そんな彼の一番のオシメンは国民的アイドルグループの一員である「ぷるる」こと
柴崎富瑠香(しばざきふるか)

そんな彼にとって憧れのアイドルに似た生徒が旭が丘高校にいた。
髪形や顔、そして雰囲気にいたるまで…

初めて彼女を学校で見かけたとき、彼の胸は大きく高鳴った。

「まじでか~!似てる!似てる!ぷるるだぁ~」

彼女の名前は中村瑞希。
亜里沙の親友で、キャンディ不法所持によりCクラスからEクラスに落とされた生徒だ。

彼女がEクラスに編入されたと聞き、原因が風紀委員に捕まったためだということを知ったとき、金好はショックだった。
彼の力をもってすれば、もみ消すこともできたのに、彼がそれを知ったときには、すでに手遅れだった。

「あ~もし僕が彼女を救っていたら…」



「金田君ありがとう」

「いいよ。気にしないでくれたまえ」

「でも…金田君ってすごいのね」

「はははは…大したことないさ」

「どうしてアタシを助けてくれたの」

「それは君が…助けるに値する女性だったからさ」

「え?それって…?」

「僕は…君を愛している」

「そんな…金田君…嬉しい…でも、金田君が好きなのは「ぷるる」に似ているアタシだからなんでしょ!そんなの嫌!アタシを…瑞希を好きになって」

「ばかだなぁ瑞希は…僕が愛しているのは君だよ…」

そんな瑞希とのやりとりを妄想しながら、現実に戻った金好は溜息をついた。

なんとか瑞希に、この思いを伝えられないだろうか。
金好は数日悩み、考え抜いて、瑞希に手紙を送ることにした。




「なにこれ」
狭くなった下駄箱スペースで、ある朝、瑞希は彼女の下駄箱に手紙を見つけた。

「もしかして…告白の手紙とか…うわ…昭和…」

差出人を見てみると「金田金好」

「げ!あの若年寄の眼鏡デブじゃん!」

瑞希は背中に悪寒を感じながら、手紙の中身を読んでみた。

「拝啓、新緑の候、いかがお過ごしでしょうか?この度、私は瑞希様に恋慕の思いをお伝えいたしたく筆を取った次第です。つきましては、お返事賜りますよう宜しくお願い申し上げます。         敬具」

「なんだ!これ!」

瑞希には、その手紙や金田の気持ちに対して、応えてあげるどころか、ツッコミを入れることしかできなかった。



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