その手が暖かくて、優しくて
その手が暖かくて、優しくて
放課後の体育館に全校の生徒たちが集まってきた。

野球部の部長、松田も笑顔で体育館に入ってきた。
停学が解かれた健介も。
これから、新生徒会長による所信表明演説が始まる。

綾小路華麻呂は生徒会費の流用により退学となり、学校内をうろついていた綾小路の私設軍隊の連中もいなくなっていた。
金田も同罪ではあったが、綾小路に、そそのかされたところもあり、また流用した全額は即日、金田の親によって弁済されたことから処分は停学にとどまったが、当然、執行部での会計職は解任された。



たった一日で私立旭が丘高等学校は変わった。

そして、
その日の壇上には新執行部が集まっていた。

副会長として中村瑞希。風紀委員長の清宮公正は留任で金森は副委員長となった。
また、会計委員は今回の不正な流用事件が起きたことに対する反省を踏まえて、佐藤が管轄する数名のグループで行うこととされ、年4回の会計報告と外部監査を義務づけることにした。
そして、防衛委員長の真鍋勝弥も、そこにいた。

彼らの中央には新生徒会長の亜里沙。

全校生徒が集まり、いよいよ亜里沙の所信表明演説が始まる。
皆が、あの綾小路追放を成し遂げた亜里沙の言葉に注目していた。

しかし、大勢の生徒を前にし、選挙中の演説のような原稿も用意してなかった亜里沙は緊張で固まってしまった。

「あの…ええと…」
極度の緊張のあまり、言葉が出てこない。

(やだ…どうしよ…ええと…)

焦って、うろたえる亜里沙の左手を、隣にいた勝弥がぎゅっと握ってくれた。









その手が暖かくて、優しくて…





亜里沙は隣にいる勝弥を見た。
こんなふうに勝弥は亜里沙を見守ってくれている。今までもそうだったように…

亜里沙は、すぅ~と深呼吸をすると、

「皆さん!今日、新しい生徒会が誕生しました!私たちが目指すことはひとつです!」

亜里沙は叫んだ。

「みんなで、素敵で楽しい高校生活にしましょう!」



学校改革は成功した。そして、この日から
私立旭が丘高校の新しい歴史が始まるのだった。





(おわり)


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