Satellite
始業式が終わり、教室に戻って、次の日からのことを軽く聞いた。

そしてすぐにまた、帰りの挨拶をする。

小走りにイケメン君の席へ行き、机をバンと叩き、すぐに帰ろうとする彼を呼び止める。

「あ、あのっ!!」

「はっ、はいっ!?」

呼び止めたはいいが、実はこの後の会話を想像していなかった。

「あ……えっ、と………」

彼はにこにことこちらを見ている。

どうしようかと戸惑っていると、彼の方から話を持ってきてくれた。

「あ…SIGN、交換する?」
*SIGN →作中でのSNSアプリのこと。

「えっ、あ…うん!する!ありがとう!!」

SIGNの交換をした時に、彼のアカウントを見ると、名前が『まっちゃん』で登録されていた。

「そういえば、名前まだ言ってなかったね。俺は松浪 陽。SIGNの名前みたいに『まっちゃん』って呼んでよ」

「う、うん! わっ、たし、は………」

「ん? ごめん、最後の方が聞き取れなかった…」

「ほ、しの、いろは…です」

カチカチに緊張しながら名前を言うと、彼は…、まっちゃんは大笑いした。

「っはは!!何そんな緊張してるの!これから仲良くしよう!」

明るい笑顔と声で、すっと彼は手を出した。

「…?」

「握手!これからもよろしく、って」

「あ…うん!」

そういうと、がっちりと握手をした。

握った手は、男子にしては小さく感じた。


「お〜いお前ら、鍵締めるぞ〜」

担任が教室の外から鍵を振り回しながら声をかけた。

教室の中には、わたしたちを含めて5人居た。

皆口々に「待って」などと言い、荷物を片手に慌てて教室を出ようとする。

わたしたちも、ゆったりとだが教室を出た。



「あ、ねぇ。星野さんって電車?」

わたしは電車ではない、人間だ。
と思いながら

「うん、電車で来てるよ」

と返す。

「すぐそこの駅?」

「うん」

「ならさ、一緒に行こう!」

彼は にぱっ、と笑う。

「うん、いいよ」

そう言うと、彼はもっと笑顔で話し出す。

「まじで!やった! どっち方面に乗る?」

「えっとね…」

そんな会話をしながら、その日は帰った。


登校して2日目にして、こんなにいい友人ができた、と内心嬉しい思いをしていた。
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