イジワル同居人は御曹司!?
「じゃあ、とりあえず食事にしよう」

奏さんは気を取りなおし土鍋の蓋を開ける。

中身はワケギを散らした玉子粥で美味しそう。

それにしてもこんな食器どこで見つけたんだろう。

「スーパーで買ってきたんだ。なんだかお粥をいれるのにうってつけな感じだろ?」

私の思考を見透かしたように奏さんはドヤ顔で言う。

この大雨の中、わざわざスーパーへ買い物に行って来てくれたようだ。

思わず胸がジンとしてしまった。

レンゲでお粥を一口分すくうと、息を吹きかけて冷ます。

…奏さんが。

「はい」手を添えて私の口元にレンゲを持ってくる。

私も反射的に口を開けると食べさせてくれた。

「どうだ?」

「うん。塩加減もちょうど良くて、美味しいです」

私が思わず笑みを浮かべると、良かった、と言って奏さんも新妻のようにはにかむ。

「…って、違う!そうじゃない!」

この逆転新婚夫婦のような状況に、思わず声を張って突っ込んだ。

奏さんはハッとしたように茶色い瞳を見開く。

「…まさか、お粥の味付けは塩じゃなくて醤油派だったか?」

だから…なんでそうなるんだ。

奏さんって案外天然かも。

大事に育てられたので世間知らずっていうのも妙に納得だ。
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