イジワル同居人は御曹司!?
11. 兄の気持ち
「I'll leave the rest to you.(後は頼んだ)」

引継の電話を切ると、タイミングよくタクシーが家の前に到着する。

トランクからスーツケースを引っ張りだした。

3年ぶりの我が家

夏の湿気が僅かに残った温い空気を大きく吸い込んで深呼吸する。

どこかの家から夕食を用意している匂いが仄かに漂ってくる。

腹減ったな…

家に入ろうとすると、灯りがついていた。

留守中、妹の歩がこの家に住んでいたらしいが、男と住むとかで少し前に出て行ったと聞いてた。

何か予定が変更になって、まだ家にいるのかもしれない。

玄関のドアを開けると、やはり鍵が開いていた。

家に上がるとふんわり甘い香りがする。

思わずため息が出た。

口うるさい妹がいると思うと憂鬱になる。

しかし、まあ、挨拶くらいはしておくか。

スーツケースを持ったまま、リビングへ行ってみたが歩の姿は見当たらない。

灯りがついていた奥の和室へ行ってみると妹の姿を発見した。

ごろりと畳の上に横たわりぐーすか眠っている。

随分だらしないな…

俺は眉を潜める。

「歩」

声を掛けるが妹はピクリとも動かない。

爆睡しているようだ。
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