イジワル同居人は御曹司!?
「紗英も俺の事が好きなんだろ?」

奏さんは顔の見える位置まで身体を引き離すと、私の頬に手を添えて上を向かせる。

「私は極M女子かもしれません」

私の回答に奏さんは目元を綻ばせた。

「じゃあ、他の男に身体を触らせるな。2人で出掛けるな。見るな」

奏さんの茶色い瞳が私を真っ直ぐに見据える。

私の事を好きじゃないくせに、自分の事は好きでいろって事?

なんて自己中な男。最低だ。

だけど、私の心はこの人を求めてやまない。

「言われなくたってそうなっちゃってますよ。性悪めがね」

「桜井にハグさせたくせに」

「其れは酔っ払った成り行きというか…」

「上書きする」

奏さんは私の顔に両手を添えて唇を塞いだ。

最近、覚えてきてしまった奏さんとのキス。

もう、この感覚の上書きは一生誰にも出来ないかもしれない。

そう思うと涙が出て来た。
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