イジワル同居人は御曹司!?
「新聞は?」

「とってません」

私の回答に奏さんはギョッと目を見張る。

「とってないって、社会人なのに新聞も読まないのか」

「そんな余裕ありませんから」

奏さんは小馬鹿にしたようにフンと鼻で笑う。

「じゃあ、買ってきて。日経とその他2.3社分適当に」

「は、はい!」

エプロン姿のまま近所のコンビニまで新聞を買いにひとっ走りする。

くそ…完全にパシリじゃないか。

新聞配達の少年のごとく、新聞を小脇に抱えながら息を切らして家に戻る。

「買ってきました」

新聞を献上すると「ご苦労」と言って奏さんはスラリとした指で受け取った。

「…おい」

掃除に戻ろうとすると不機嫌な声に呼び止められる。

「日経、読売はわかる。だけどこれは何だ?」

「スポニチです」

奏さんの目が瞬時に吊り上がる。

「朝っぱらからスポニチを読むほど俺がスポーツ好きに見えるか?」

「み、見えなくもないです」

奏さんの迫力に怯んで思わずどもってしまった。

「それに芸能ゴシップ記事とかも色々載ってていいかなぁと思って」

…私が後で読むのには、と心の中で付け足す。

プチ、と血管が切れる音が聞こえたような気がした。

「やり直し!」

奏さんは私にスポニチを突き返した。

再びコンビニまでダッシュすることを余儀なくされる。

「くっそー!あのメガネぇぇぇ!」

エプロン姿で走りながら叫ぶ姿を、通行人から不審な目で見られたのは言うまでもない。
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