キラキラ想い出マーブルチョコレート
「何か……、ついてますか?」
健ちゃんのことをぼんやりと思い出しているうちに、どうやら近藤さんの事をガン見していたらしい。
「あっ、ごめんなさい。二重が羨ましいなって」
思わず正直に言ってしまってから、慌ててコーヒーを口にした。
何を言ってるんだろ、恥ずかしい……。
初対面の相手をジッと見るなんて、失礼だよね。
自分の失態に肩を若干落としていると、近藤さんは自然な笑みを浮かべた。
「槇田さんは、一重が素敵ですね」
え……。
突然言われたことに、言葉が出ない。
素敵ですねって……。
今まで会話という会話もなかった相手に、急にそんな。
お世辞、……だよね?
穏やかな笑みをたたえている表情からは真意を読み取れず、でも素敵なんて言われて耳が熱い。
恭子の真似をして、ドキッなんて口に出して冗談のように笑い飛ばしたほうが良かっただろうか。
そしたら、会話も弾むよね。
そう思っても、私にそんな芸当など備わってはいないのだけれど。
「実は、結構前から槇田さんの事が気になっていて。やっと会う事ができて、今日はかなりテンションが上がってるんです」
ハイテンションだという近藤さんの声が、ティールームに少し響いた。
弾まない会話を思えば、そんなにテンションが上がっていたなんて感じ取れなかったけれど。
今目の前に座っている近藤さんの表情は、にっこにこで。
あながち嘘でもないのかな、と思う。
嬉しさに少し大きな声になってしまったことを誤魔化すみたいに、近藤さんはまた珈琲を口にする。
けれど、隠しきれないテンションが笑顔には現れているのは相変わらずだった。
そうやって、あんまり嬉しそうな笑顔をするものだから、つい釣られて私の頬も緩んだ。
自分の事をそんな風に思って貰えるなんて、ありがたいことだよね。