鉢植右から3番目
「あれ、大家さんが世話してくれた。出勤前にドア閉めてたら廊下の掃除をしていて、緑がいいですねって言うから――――――」
言ったらしい。でも世話をしている人間が暫く家を空けるらしいんですって。そしたら御歳63歳の大家さんはにっこり微笑んで、じゃあ私がその間は見ててあげようって、言ったらしい。
私はまた口が開きっぱなしになった。
「・・・・君がしてくれたわけじゃあないのね?」
「そう」
また定位置である座椅子のほうへ歩いていく。そしてだらりともたれかかった。
私はそれを口をあんぐりとあけたままで見詰めていた。・・・何てこった!さっきの私の素晴らしい微笑みを返せ、このダレ男!!
もはや疲れて怒りも湧いてこない・・・・こいつは、あくまでもやっぱり漆原大地だった。
出て行った妻を追いかけるでもなく、迎えに来るでもなく、ご飯もいい加減で、植物の世話も上手に大家さんにさせていた。
あああああ~・・・・・・・。つい、テーブルに肘をついて両手で額を押さえた。
「・・・結局、どうするの」
「へ?」
一人凹みの溝で沈みかけていた私はいきなり耳の中に入ってきたヤツの声にパッと顔を上げた。
座椅子に片方立てひざで座ったやつが、私を見ていた。・・・ええっと?何がどうするって?若干混乱した私が困惑した顔で見ていると、淡々とヤツが聞く。
「契約解除するのか?」