鉢植右から3番目


 私は、ここにいるんだよ。

 拳をぎゅうっと握り締めた。

 私、は、ここに・・・。


 気付いてよ、ねえ、一緒に暮らしている君。


 ねえ―――――――――――



 そのまま横たわって、眠ってしまったようだった。

 夜中で、その暗闇の中、何かの気配を感じ取って目が覚めた。

 ガタン、と音がしてハッとする。がばっと身を起こすと、無意識が開けっ放したベランダを見詰めた。

 そこに、誰かがいた。

 思わず呼吸が止まる。

 その黒い影は、多分男。ベランダに立ち、今まさにガラス戸に手をかけてるところだった。

 瞬時に状況を理解して、それと同時に恐怖が湧き上がってきた。

「――――――うわあっ!!」

 身を引きながら、絶叫した。

 人がいて見られているとは思ってなかったらしく、絶叫に驚いただろうその黒い影もビクンと飛び上がり、ガタンと大きな音を立ててベランダを乗り越えて、飛び降りた。


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