…だから、キミを追いかけて
「なっ?先ずはノンビリし。焦らんでも、ここにも勤め口はあるから」

穏やかな口調で祖母が微笑みを浮かべる。
その言葉の裏に、私の体調を気にしてるのが分かった。

「…ありがとう、おばあちゃん。少しノンビリしたら考えるよ……」


女三人の食事風景はお正月以来。
あの時はまさか、ここに戻って来ることになるとは考えもしなかった。

「……そう言えば夕夏、この間電話で相談したいことあるって言うとったけど、それは仕事のことだったん?」

ギクリとする母の質問に手が止まる。
ゆっくりと母の方を見ると、祖母の心配そうな顔が目に入った。

「…うん…ちょっと、会社の業績下がってるみたいだったから心配してたの。もしかしたら閉鎖になるかもしれん…って言いたくて。でも、思った以上にそれが早くて、私もかなり驚いた……」

冷や汗をかきながら、考えてたシナリオ通りの言葉を言う。
嘘ばかり重ねるこの唇に、海の潮でも塗りたいくらいの苦さがあった。


「仕事は何だったかいね?」

母の質問はいちいち心臓にこたえる。
ドギマギしながら、私はまた嘘を重ねる。

「パソコンのオペレーター」

注文してきたお客さんの商品内容を確認して、パソコンで発送準備をする仕事だと伝えた。


「そうか。そうやったね…」

頷く母に心の中で手を合わす。
何もかも嘘ばかりつく娘でごめんね…と、泣き出したい心境に陥った。
< 12 / 225 >

この作品をシェア

pagetop