…だから、キミを追いかけて
「火事や…!」


ギョッとして彼の眼差しを追った。
視線の先を見定め、あっ……と声を殺す。



水平線の上に浮かぶ漁火の一つが異様に大きい。

紺色に染まる空に、真っ黒い煙が上がっている。

異様な汽笛が響き、それはやがて、大きくなっていったーーーー。




「マズい!このままや駄目や!」

波留は私を離し、床の隅に避けてあったロープを掴んだ。
階段の柱にそれを巻き付け、自分の身体に端を絡ませる。


「どうすんの⁉︎ …波留…!」


まさか…と思いながら聞く。

顔を引き締めた波留が私を振り返り、真剣な表情で答えた。


「組合長のとこへ行く!お前は此処で待っとれ!」

「待っとれって……独りで…⁉︎ 」

言うが早いか、波留はさっさと窓を乗り越え、下に降り始めた。

「えっ…ちょ…ちょっと!波留っ!!」


またしても……言い逃げ…⁉︎



でも此処は……




(さすがに追えん……!)







黒闇の中に、波留の姿が消えて行く。


バタバタ…と走り去る足音。


(お願い……!…独りにせんとって………!)




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