…だから、キミを追いかけて
「夕夏に務まるような仕事なんかあるか⁉︎ 土木作業員……これなんか向くんやないか⁉︎」

明るい笑顔で指差す。何処か違うように見えるのは、彼がいつもと違う服装をしているからだろうか。


「何で私に土木が向くんよ!馬鹿らしい!」

波留の調子に合わせた。変に意識したら惨めになるだけ。波留にとって、私は恋愛対象にならない。彼は気持ちは絶対揺るがないと言った。だから、これ以上、深入りしても無駄だ……。


「お前、暇やろ?自販機のコーヒーでも一緒に飲まんか?」

出張所の食堂に、昼ご飯を食べに来たらしい。休憩時間はもう少しあるから…と喫茶室に誘われた。

「波留が奢ってくれるならいいよ」

笑って返事をする。

「…ガッチリしとんな…」

呆れながらも奢ってくれる。明るい喫茶室の窓際の席で、アイスコーヒーをご馳走になった。


「…この町、年寄りばっかやけぇ、仕事あんま、なあやろう?」

市内に出れば、まだマシかもしれんぞ…と教えてくれる。通勤時間が長くなると、早起きするのが億劫になる。
一人暮らしは当分させてもらえそうにない。自分としても、実家のある町内で暮らしておきたい。
波留や澄良にいつでも会える………そういう環境に身を置きたい。


「私…なるべく遠くで仕事に就きとうない……。折角この町に戻ってきたんやし、実家でのんびり暮らしたいから……」

おばあちゃん孝行したい…と言ったら、波留はふぅん…と鼻を鳴らした。

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