…だから、キミを追いかけて
「夕夏にしては感心やな。祖母ちゃんもそれ聞いたら泣くんと違うか?」

泣き虫やな……と言われたことを思い出し、さっと顔が熱くなった。恥ずかしい程に顔に出る自分が嫌になって、慌てて俯いた。

「…そんなヤワなおばあちゃんやないよ…私のおばあちゃんは……」

流産の話を聞いて、泣きもしなかった。
冷静に落ち着いた態度を示し、それから出来る限りの力を貸してくれた。

ーー子供の頃からそうだった。だからもう…心配させたり、困らせたりしたくない………。


黙り込む私を見て、波留は自分がやった事を思い出したのだろう。急に話の方向を変え、窓の方を眺めた。

「俺の勤務先、ここの隣なんや」

外を指さしている。
視線を他所に向けてくれるのは有難い。波留と正面向いて話すのは恥ずかしい。昨日の今日で、忘れられない記憶もあるから。

「役場の食堂は安いし旨いけぇ、よう来るんや。お前、ここの食堂で食べたことあるか?」

「な…ないけど……」

私がここに来たのはまだ2度目やし…と答えた。

「ふぅん……まだ食ったこと無いんか……」

波留は自分のポケットからケータイを取り出し眺めた。何かを確かめる様に頷いて、それから元の場所へしまい込んだ。

「…それなら食って帰れ。食堂までついてってやっから!」

「えっ⁉︎ い、いいよ!波留はもう食べたんやろ⁉︎ 」

両手を振って拒否した。

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