…だから、キミを追いかけて
翌朝はよく晴れた。

空一面、曇も霞もない。

水色があるだけ。
それがグラデーションしているだけ。



「オレさー、子供ん頃この空を夏休みの宿題で描いたことあるんよ。そしたら担任のヤロウから『やり直し!』って言われてさー!チックショーって思いながら、ヤケクソで海に変更したことある!」

思い出話をするのは星流。
昨日のメンバーで魚釣りをしてるから見に行こうと、朝、澄良に誘われた。


「お前のやりそうなことやな!」

海斗さんは笑って釣り上げた魚を針から外した。

「星流はバカばっかやってたから目の敵にされてたんだよ!」

釣り糸を垂らしながら黒い顔をした波留が言う。

「そんなお前だってそーとーワルだったじゃんか!いっつも廊下に立たされて、その回数オレより多かったろう⁉︎ 」
「俺はただ授業を受けたくねーからワザとしてただけで、お前とは次元違う!」
「一緒一緒!変わんねーって!波留も星流も!」

同級生同士の会話を聞きながら足元にいる蟹と戯れる。
小さくて赤い色をした蟹は、刃先の白いハサミを振りかざして応戦していた。



「……今日はもう気分良いのか?」

無愛想な顔で私を無視し続けていた波留が声をかけてきた。
目線を向け、その灼けた顔を見る。

不覚にも昨夜その腕に支えられた。
私の発した一言をこの人は聞いただろうか…。


「うん……今日はいい……昨日は……ごめん……」
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