絶対死刑法
第一条 「序章」

猪崎慎也の場合



何気なく部屋にある設置してあるテレビを見るために、リモコンのボタンを押すとスクリーンに映る内閣総理大臣。


鈴木武雄(スズキタケオ)。年齢は今までの内閣総理大臣からしては若い30代前半。しかし彼からは青臭さは感じられず、爽やかな好青年という印象。ま、もう好青年という年でもないが。いつも一生懸命で何事にも努力し前向きに取り組む姿勢、そして彼のスラッとした顔立ち。世の女性陣は放っておかない。



女性陣に大人気、男性陣にも人気。老若男女人気の彼は今は有望な内閣総理大臣に去年就任した。



スクリーン越しでもわかる顔の整い方に俺は部屋にある鏡を見る。



「俺もあんな顔ならモテるんだろうな…。」


何度、笑っても、顔を歪ましても変わることのない俺の顔が鏡越しに映し出される。

これが、俺。猪崎慎也(イノザキシンヤ)。高校2年生の将来もまだ決まってない平凡な高校生。小説や漫画なら、何か能力があったり、イケメンというのがスタンダードだろう。しかし、俺はいったって平凡な高校生。何も取り柄もなく、イケメンでもない。


何度も変形しても変わらない顔を見て溜息をつき、俺は再びテレビへと視線を戻す。



テレビの右上には『緊急速報!新憲法制定!!』と表示されていた。



新憲法?



珍しいな。この前、日本国憲法は更新されたばかりである。何か漏れがあったのだろうか。疑問を持ちながら、考えていると、テレビから鈴木総理の咳払いが聞こえ再びテレビに集中する。










「本日から新憲法を制定します。






日本国憲法第104条"絶対死刑法"
『規則、憲法、またはルールを違反したものは即、














"死刑"













とす』以上、緊急報告を終わります。」



鈴木総理は一礼し、テレビはいつものニュース番組に変わった。

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