し・か・え・し
和解と別れ



アパートに近づく度に今日も居るかな?
とビクビクしてしまう。


今日は居ないと安心して家路に向かう。


あたしが帰ってしばらくしてから
ピンポンが鳴った。


うそ・・・
ここを探し当てた?


鳴り止まないベルの音
怖いな・・・。


ピンポンのベルと
今度は何をするドアを叩く音。


「・・・さくら」


うん?今微かに『さくら』って聞こえた
・・・空耳か?


「おい!」


やっぱり啓次郎の声?


「啓次郎・・・?」


「開けろよ」


ドアを開けると啓次郎が立っていた。


「携帯にかけても出ないし」


あ・・・携帯切ったままだった。


「どうして?ここへ?」


「会いたくなったから・・・ダメ?」


啓次郎の笑顔を見るとポロポロと
涙が溢れてきた。


「何を泣いてんだよ
そんなに会いたかった?」


うん・・・会いたかった
でも口にしない。


「なぁ~ストーカーされてるって?」


ストーカーじゃないけど


「どうしてそれを?」


「さくらの友達がバーに訪ねてきた
それもオレの名前とか知らないから
大学生ぽい男の人います?
って来てオレが上の人に呼ばれて
行くと友達ってのがいきなり
さくらのアレですか?って聞くんだぜ
アレってなに?と言いたかったけどさ」


桃華???


「えっ?桃華がなんて?」


「会いに行ってやって欲しいって
変な男に付きまとわれてるって」


「それだけ?」


「後は・・・
後は・・・えっとぉ・・・」


「聞いたんだね
あたしが襲われたこと」


「どうしてどうなったかは
聞いてないけど傷付いてるから
行ってやって慰めてやって欲しいって」


「それだけ?」


「うん・・・」










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