妬こうよ、そこはさ。
朝ご飯の片付けを二人でして、分担して掃除を終わらせると、お互いのんびりする時間だ。


お互いに好きなことをする時間は、どんなに忙しくても、どんなに少ししか作れなくても、必ず一週間に一回は取る。


俺は買うだけ買って読んでいなかった本を読むことにした。


雑誌を見るのもいいかもしれない。


思いつきに立ち上がって、部屋にある本棚を物色する。


一方、奥さんは。


「これ? いやでも、こっちかな……」


何故か、着替えまくっていた。


扉を開け放しているものだから、着替えは奥でしているようだけど、入り口付近の姿見で確認している様子が丸見えだ。


どこか行くんだろうか。


まあそんなところだろう、とあっさり考えて、リビングに戻る。


見繕ってきた小説をしばらく読み進めて。


「…………」


奥さんの着替えが何だか随分遅いのが気になった。


一般に、女性の準備は時間がかかるものだ。


でも、彼女は結構適当な人だ。適当っていうのは悪い意味じゃなくて、いい意味で。


実利を優先する奥さんが、ちょっとした服一つをこんなに決めかねているのなんて、一緒に出かけるときでさえ見ない。


珍しい。いや、確実におかしい。


そういえば、彼女が悩んでいた服はスカートではなかったか。


はっきりと見た訳ではないけど、先ほどの垣間見を思い起こすに確かスカートをはいていた。


……スカートなんて、一緒に出かけるときでさえ、滅多にはかないのに。
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