Rolling Love

 修ちゃん――高原修哉は、わたしの幼馴染ではとこの男の子だ。小さい頃は近所に住んでいたものの、修哉のお父さん――おじさんの仕事の都合で、車で1時間ほど離れた町へ引っ越してしまった。以来普通程度に親戚として付き合ってきたんだけど、今年の春、わたしと修ちゃんは偶然にも同じ大学に入学した。大学は、わたしの家の最寄駅から電車で30分のところだ。修ちゃんは電車で2時間近くかかるのでアパートを借りたようだ、と春にお母さんが言っていたし、現に大学で修ちゃんに会った時も本人がそう言っていた。そこまで頭の中で整理したところで、ようやっとわたしは口を開くことが出来たのだった。

「え、ねえ、待って?修ちゃんうちに来るの?なんで?アパートは?っていうかお父さん海外勤務?どゆこと?」
「それがね、話せば長いんだけど、どうも大家さんが修哉くんの部屋、二重契約させてたらしいのよね。で、修哉くんより先に借りてた学生さんが留学から戻ってくることになって、バレそうになって揉めて、修哉くんが追い出されちゃうらしいのよ」
「何それ。悪徳大家じゃんそんなの」

 一人暮らししてた部屋の二重契約――なんだか漫画で読んだ気がする、とぼんやり思ったけれど、どちらかというと事の理不尽さの方に怒りが込み上げてくる。理不尽なことが嫌いなわたしの機嫌が悪くなるのを察知したお母さんは、努めて柔らかい口調で話を続けようとするけれど、わたしの感情のスイッチはそう簡単にオフにできそうになかった。わざと一拍置いて、お母さんは再び口を開いた。

「でね、お父さんがアメリカ行くじゃない」
「……お母さん、私それ初耳なんだけど……いつ決まったの?」
「3日前よぉ。驚いちゃった。でね、お父さん、ああでしょう?とても一人で暮らせそうにないから、お母さんも一緒に来てって」
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