麗しき星の花
 ホテルの庭を貸し切って開催された春のお茶会。そこに橘琴音、玲音姉弟が出席していた。

 今回のお茶会の主催者は親戚筋である藤家。お茶会の主催はもう一つの親戚、柊家を合わせ、『御三家』と呼ばれる三家で持ち回っている。来年が橘家の番だ。

 柊家当主は和音と小・中学校の同級生で仲もいい。藤家当主とは年が離れているものの、良い関係を築けている。

 同じ宮家の傍流である御三家は、結束力が強い。政財界を牛耳っている一条グループの総帥ですら、御三家に結束されると手出し出来ないという噂だ。

 だからこそ。

 琴音、玲音の母である水琴は、『藤家』の人間なのだ。



 広い庭園に赤い毛氈と野点傘がいくつか並び、ホテル内には立食ブースも用意されている。何百人という招待客がお茶や食事を楽しむ中、琴音と玲音もお茶を楽んでいた。

「更紗お祖母様の立てるお茶はとても美味しいです」

 桃色の着物を来た琴音がにっこりと微笑むと、品のいい老婦人が穏やかに微笑んだ。

「それは良かった。玲音さんはどうですか?」

 琴音の隣に座る袴を着た玲音は、少し困ったように微笑んだ。

「んー。僕にはまだ、お茶の味はわかりません……」

「ほほほ、正直ですね。あちらに玲音さんの好きそうな洋食も用意されていますから、あとで琴音さんと一緒にお食べなさい。あまり羽目を外さない程度にね?」

「はい」

 玲音の素直な返事に更紗が笑みを深めて頷いたところに、歓声が上がる。会場の中心にある池の前で、和音と拓斗、花音が3人でヴァイオリンを構えていた。

「和音さんや花音さんはともかく、拓斗さんの演奏は久しぶりです。これは楽しみですね」

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