麗しき星の花
 目を細める更紗と同じように、会場にいるほとんどの客が3人に注目し、期待し、そして頬を紅潮させて演奏に聴き惚れていた。

 一曲弾き終えると、地が割れんばかりの拍手が鳴り響く。その反応に一番喜んでいるのは琴音だ。

「さすがお父様」

 一緒になって拍手をしていると、更紗に声をかけられた。

「琴音さん。水琴さんはお元気?」

「えっ? はい、元気です」

「今日は参加されていないのね」

「……お母様は、あまりこういう場には……」

「そうですね。“お顔に傷がありますから”」

「……はい」

 琴音が身を縮めて俯き加減に返事をすると、更紗は柔らかく微笑んだ。

「今度屋敷にいらっしゃいと伝えておいて? 斎賀夫人もお呼びしますから。久しぶりに水琴さんの演奏が聴きたいの」

「はい、伝えます」

「琴音さんと玲音さんも、是非一緒にね? おばあちゃん“たち”に孫の成長ぶりを見せてちょうだいね」

「はい!」

 祖母のお誘いに、玲音も元気一杯に頷く。


 藤更紗。

 水琴の義理の母となってくれた、藤家当主。訳あって表立って接触は出来ない、本当の両親と会えるよう、更紗が色々と手を回してくれる。

 柔らかく微笑む藤家当主のおかげで、水琴は世間から守られているのだ。

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