麗しき星の花
 琴音はこの女性に憧れていた。母のことはもちろん一番綺麗だと思っているが、李苑はそれに並び立つほど美しく、気品に溢れている。

 そしてその隣にいた男性のことも。

「こんにちは、琴音ちゃん、玲音くん」

 柔らかく笑みを浮かべる紳士に、琴音はぽーっと見惚れた。

 琴音の中で世界一格好良いのはもちろん父であるが、琴音の知る限り、この男性はただひとり、父に並び立てるほどの美貌の持ち主だ。

 ダークブラウンの長めの前髪から覗く美しい双眸が優しく細められると、心臓が爆発しそうになる。李苑同様、輝き具合が凄い。2人が並ぶと直視するのも躊躇われるほど眩しい。

「は、はい、ごきげんよう、聖様。あの、雛ちゃんと翼くんはお元気ですか?」

「ああ、元気だよ。今度会ったら遊んでやってね?」

「はい!」

 聖の甘い声に蕩けそうになりながら、満面の笑みで頷く琴音。そして、それを微笑ましく見守る玲音。……玲音、お前、本当はいくつなんだ。


 この美しい2人は夫婦で、苗字は櫻井。聖が小さな個人医院の院長で、李苑はその手伝いをしている。

 李苑は旧姓が紫乃原と言い、大手製薬会社の社長令嬢である。柊家当主の方と知り合いで、その繋がりで和音とも知り合ったと聞いている。

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