麗しき星の花
 それから簡易キッチンにある冷蔵庫を開けて「冷てぇ! なんじゃこりゃ!」と叫んだり、ドライヤーのスイッチを入れて「あっちい風が出てきた!」と驚いて床に叩きつけたり、サニタリールームで「水がこんなに出てくる! すげぇ!」と感動していたりした。

 そんな兄を少し恥ずかしく思いながら、リィは琴音から説明を受ける。

「お二人は早朝と夕方に修行をすると聞いていますので、その窓から外に出られるようにしてあります。修行で使う靴はこちらにも置けますので、出入りはご自由にどうぞ」

 琴音はリィをリビングの窓際へと案内する。

 窓には扉がついていて、そこから外のバルコニーに出られるようになっていた。そこに靴箱があって、運動しやすいシューズが入れられている。

 至れり尽せり過ぎて申し訳ないような気分になっていると、琴音がふふっと微笑んだ。

「こちらのお部屋は、フェイレイさんとリディルさんにもお使いいただいていたお部屋です。お二人にも気に入っていただけると良いのですが」

「父様と母様が、ここに……」

 リィは首から下がる指輪を握り締めながら、バルコニーから見える庭の景色を眺めた。よく手入れされたイングリッシュガーデンには、たくさんの精霊たちが飛び交っている。

 それから部屋の中を振り返り、感慨深く眺める。

 ここはかつて両親が過ごした場所。

 そして、両親が通った学校。

 そこで双子の新しい生活が始まるのだ。



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