過保護な彼にひとり占めされています。
「けど一花もこの前大変だったでしょ。あの人本当しつこいし」
「あ、でも……相葉も、来てくれたので」
「あぁ、相葉ね。私から話聞いた途端吹っ飛んで行っちゃって、あの時はびっくりしたー」
その会話に思い出すのは、あの日駆けつけてくれた相葉のこと。
この前のキャッチセールスの時もそうだけど、困った時にああして現れて助けてくれたりするから、一層安心感が募っていく。
呆れながらも笑ってくれるその姿に、その度胸はドキ、ドキ、とうるさいくらい音をたてる。
……これじゃ、まるで。
「おーい、村本?」
すると突然視界を埋め尽くすように現れた相葉の顔に、心臓がドキッ!と跳ねた。
「わっ!?あ、相葉!?」
心の中を読むかのような丁度よすぎるそのタイミングに、思わず声がひっくり返りそうになる。
「さっきから呼んでるのに、なにぼんやりしてるんだよ」
「え!?あ、ごめん……」
ぼんやりって……相葉のことを考えてたんだよ。なんて、言えない。
知られたくもなくて、それ以上の言葉を飲み込む。
そんな私に、相葉から差し出されたのは一枚の紙。先ほど名波さんから渡された企画書たちを持ちながら、更にそれも手に取った。
「これなに?」
「今度の部署交流会の概要」
続いて相葉から用紙を受け取る名波さんは、内容に目を通しながら言う。
「あぁ、確か来週だっけ?すっかり忘れてた」
そう、来週の火曜……平日の予定のない日を使って行われる部署交流会というそれは、年に一度、日頃接点のない部署同士で出かけたりするという社内イベントだ。
例年では秋頃などもっと前の時期に行われるはずだったけれど、部署それぞれの都合や行き先の都合などからこの時期までずれ込んでしまった。