過保護な彼にひとり占めされています。



「今年は本社の経理部とバーベキュー大会かぁ、昼間とはいえ冬にバーベキューって……寒いよねぇ」

「寒い中で熱いものを食べるから美味いんだろ」



寒い中で熱いもの、かぁ……想像すると確かにそうかも。暖かいスープとか飲んだら美味しそう。

思い浮かべ、緩みそうになる口元を慌てて押さえると、相葉はそれを見て笑った。



「そういえば今日、本社から経理部の人が来て最終確認の打ち合わせするって理崎が言ってたっけ」



名波さんが思い出したように言ったその時、ガチャ、とフロアのドアが開く。

そこから姿を現したのは噂をすれば理崎さんで、彼は辺りを見渡し私を見つけると声をかけた。



「おーい、村本。手空いてたら応接室にコーヒーふたつ持ってきてくれ」

「え?あっ、はい、わかりました」



突然の名指しに少し驚いてしまうけれど、コーヒーメーカーの使い方からお客様用のカップの位置まで、一番よく分かっているのは日頃雑務を請け負う私だ。そう思うと納得できてしまう。



「コーヒーくらいなら私が持って行ってあげるわよ」

「……名波はいい。お前のコーヒーマズいから」



明らかに嫌な顔をして断る理崎さんに、名波さんは「失礼な!」と口を尖らせ怒った。

そんなやりとりに笑いながら早速給湯室へ向かおうとドアの方を見ると、理崎さんの背後にもうひとり誰かがいるのが見えた。



「理崎さん、そちらお客様ですか?」

「え?あぁ、客っていうか……本社の」



私の言葉に、『一応紹介しておくか』といった様子で、理崎さんは背後の人にフロアに入るよう促す。


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