過保護な彼にひとり占めされています。



「……あの子ってさ、絶対相葉のこと好きだよねぇ」

「え!?」



すると隣で同じく野菜を切っていた名波さんの突然ひと言に、包丁を持つ手が思わず止まる。



「あ、あの子っていうのは……」

「成宮さんだよ、成宮さん。あれだけ相葉にベッタリしてれば誰でも気付くって」



さ、さすがの名波さんも気付いたんだ……。

それほど成宮さんの相葉への態度は分かりやすい、というか分かるように見せているのか。

買い出しへ向かう相葉の背後に続く成宮さんという、ふたりの後ろ姿を見る名波さんに、私もその姿をちらりと横目で見た。



「相葉も気付いてないのかねぇ、鈍感な男。まぁ、あの様子だと相葉は完全に友達って感じだろうけど」



片想いしているのに相手は気づかないままという姿は、客観的に見るとまるで少し前までの私と相葉のよう。

相葉は『ただの友達』って言ってた。だからなにもない、誤解されたくない、って。

けど、成宮さんが本気で言い続けたらどうなるんだろう。

今の私の心のように、その心も揺らいでしまうんだろうか。



……そこまで考えて、ふと思う。

もしかして私って、成宮さんからすればすごく嫌な人かもしれない。

相葉からの気持ちに答えることもせず中途半端な位置で、なのに相葉の心が揺らいでしまったらどうしようと思っただけで胸が苦しいなんて。



……はっきり、しなくちゃ。

相葉のためにも、自分のためにも。

相葉を想う、彼女のためにも。



中途半端なままじゃいけないとわかっているのに。





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