いつか晴れた日に
コーヒーもすっかり冷めてしまった頃、「じゃ、帰るね」と黒崎くんが立ち上がった。

「うん」と小さく頷いて、黒崎くんの背中に続いて玄関に向かう。

黒崎くんのことを色々聞きたかったけれど、結局何も訊けなかった。


「明日、また会社で」

「うん」


「……ゆっくり休んで」

黒崎君は微笑むと、わたしの頭に軽く触れる。

もっと一緒に居たいと思わせる黒崎くんの仕草にドキリとする。


「戸締り、忘れずにね」

「うん。ありがとう」

そして、黒崎くんは帰っていった。
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