1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

「蓬は、責任を持ってこれからも育てていくつもりです。…蓬が、それを望む限り、私はこの子の父親ですから」

 お父さんの言葉に父親は、どこか悔いるように私を見つめてきて、でもその視線を逸らしてしまいました。

 父親の背後から警察の人がやってくる。

 気配でそれに気づいた父親は振り返ると、あと少しだけと言い、私に視線を向けてきました。

「蓬、お前の気持ちも考えずに…すまないことを…」

「謝らないで」

 聞きたくない。

 嫌だよ…。

 なんでそんな悲しい顔するの?なんでそんなに…父親らしい顔をするの?

「…あなたの謝罪が、あのことなら、謝らないで」

 ずっと、悪役でいてくれたらよかったのに。なんで、こんな時に父親づらするの?

 …そんなの、ずるい。

「…あの時、私のためだって言った。あの言葉を、否定しないで。…嘘でもいい。幻覚でも、幻でも、なんでもいいから。…あなたに愛されてたって、思わせてよ!」

 父親は虚を突かれたような顔をすると、涙を堪える私から視線を逸らすように下を向いた。

 そんな父親の肩を警察が持ち、連行して行った。
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