最悪な出会いから
同窓会気分
 私の座ったテーブルには大学時代の友人八人が集められていた。私以外は全員ミセス。中には小学生の子供がいる友人も。でも言われなければ二十代に見える。みんな充分若い。

 今時、三十一歳くらいで老け込んだおばさんなど一人も居ない。みんなまるでセレブミセス向き雑誌のファッションリーダーのよう。キラキラ輝いて、このまま友人の披露宴に招かれたらなんて特集記事に載っても、全然おかしくない。発行部数も増刷されそうな勢い。

「未緒、二次会行くんでしょう? 美耶子張り切ってたわよ」

「そうよ。未緒のお婿さん探すんだって」
 と瞳と留美。

「行くけど頼んでないわよ。お婿さん探しなんて」

「いいからいいから。せっかくのチャンスなんだから」
 と千夏。

 ふとお隣のテーブルを見ると、たぶん美耶子の会社の後輩のテーブル。華やかさと瑞々しさは平均年齢キッチリ三十一歳とは明らかに違う……。

 乾杯が終わったら席になどおとなしくしていない。そのお隣の新郎の後輩らしきテーブルに足繁く通い写真を撮って貰ったり笑顔を振り撒いて忙しそう。

 家の会社の事務の子たちを思い出した。

 自分の欲望に正直なのは別に良いことなんじゃないの? 

 きっと二次会もあの子たちを中心に進んで行くんだろう。



「そういえば私の行ってるヘアサロン、未緒がデザインしたんだって?」
 と瞳。

「三年前にオープンした渋谷のヘアサロン?」

「そう。オープンした時からずっと気に入って通ってるの。この前2号店を南青山にオープンしたのよね。デザイナーさんが素敵な方でって話しを聴いてたら、藤村未緒だって言うから驚いたのよ。未緒すごいのね」

「すごくなんかないわよ」

「サロンの内装が素敵だと思って通い始めたのよ。そしたらオーナーの腕もセンスも良いからずっと常連よ」

「そうなの。知らなかった」

 世間は狭いものなんだ。
 悪い事は出来ないと思った。……別に何も悪い事なんてしていないけれど……。

 白ワインをひと口飲んでグラスを置いたら……。ん? 誰かの視線を感じる。何処? ふと見ると伊織君と目が合った。三つ先のテーブルに居た。偶然よね。


 それからも久しぶりだから話は尽きない。美味しいお料理をいただきながら同窓会気分。大声で騒いだりはしないけれど。そこは三十一歳の大人の分別で……。お偉い方々のスピーチは続いていたけれど……。

 二時間半の披露宴は楽しいお喋り大会となっていた。
 何年ぶりかで会う友人も話し出せば、すぐに昔に戻れる。学生時代の友達はやっぱりいいものなんだと改めて思う。今度このメンバーで同窓会しようよと誰かが言った。美耶子の新婚生活が少し落ち着いたらと話が決まった。

 そして楽しかった披露宴は御開きとなった。


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