鏡花水月◌˳⚛˚
少し歩いてから着いたところは、普通の喫茶店だった。まぁ、テスト終わりに来るぶんには丁度いいだろう。

──ガラッ

紺がドアを開けると、予想だにしない光景が広がっていた。十数人の男女が綺麗に列をつくり、いらっしゃいませと例をしている。唖然としている私を他所に紺はつかつかと入っていく。ちょっと待ってよ、と喉まで出かかった私の声は、店員の『どうぞ、お入りくださいませ。』という言葉に遮られた。こういう雰囲気に慣れていない私は、列の真ん中を歩くだけで酷く緊張した。しかし、入り口から広がっている奥は大富豪が来るレストランの様な高級感を醸し出していて、更に緊張した。

「突然だけどさ」

今まで何も言わなかった紺が、不意に振り返って言った。

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