振った男
パクパクと口に運んでいく一樹を見ていて、本当に嬉しくて、幸せを感じた。


「クスッ。舞花って、結構無邪気だよね。かわいい」


優しく笑う。

一樹から初めて「かわいい」と言われて、全身が熱くなった。


「舞花、顔が真っ赤だよ」


「だって、一樹が恥ずかしいことを言うから」


私は、俯いて、ドリアを食べ始めた。好きな人に「かわいい」と言われる喜びを噛みしめた。


「いや、ほんとかわいいよ。最初会ったときの印象とかなり違うし。ほんと一緒にいて、楽しいしね。今日も楽しかった」


一樹はちゃんと私を見てくれていた。もしかして、私のこと、好きになってくれたかな?

淡い期待をしながら、食べ終えた食器を洗う。手伝うと言ってくれたけど、数が少ないことをあったから、断った。狭いワンルームだから、ベッドがすぐそこにあって、一樹はそこに座って、テレビを見ていた。

隣に座って、私もテレビを見るけど、興味のないバレーボールの中継で試合の動きよりも一樹が気になった。
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