天使が私に落ちてくる
それでも犬がご飯を前に待てが出来るみたいに、あたしも待てが出来ていた。
小さくても、お姫様が大好きだったあたしはレディとしてきちんと待てが出来ていた。
視線はアイスクリームをガン見していたし、わいてくる唾をごくりと飲みこみながら待っている。
気を抜くと口の端からよだれが垂れてくるのを服の袖で男前に拭っていたが、自分ではレディのつもりで精一杯我慢していた。
その時、可愛らしいボーイソプラノが聞こえた。
「ママ、お話は座ってからにしようよ。アイスクリームが溶けちゃうよ」
声の方を向いたら、あの天使がママのスカートにつかまっておねだりしていた。
保育園ではいつも大人しい子なので、声を聞くのは初めてだった。見かけどおりの可愛らしい声だったけれど、それよりもアイスクリームへの許可を取り付けてくれたことが嬉しかった。
やれば出来るじゃない。