天使が私に落ちてくる

ちらちらと結香ちゃんを伺っている男どももいるけれど、結香ちゃんの醸し出す一種独特な雰囲気にみんなが恐れおののいているので、彼女は安全なのだ。


図書室の隅でノートを広げて書きつけているのは、数学の証明問題でどれだけ美しい回答が出来るのかを競っている。

彼女は、めちゃくちゃ理系脳なので、人の感情の機敏を学ぶ国語やら古典が大の苦手で、正しい答えのある数学が好きなのだ。


ちなみに数学だけでいったら、僕も結香ちゃんには適わない。他の教科で挽回して初めて結香ちゃんを上回ることが出来るだけで、結香ちゃんほど得手不得手の差がないだけだ。


図書室の隅ではまだ二台目とやらの話で盛り上がっている。ざわざわしていても、集中している結香ちゃんは気が付かずにいっしんに書き込んでいた。


たとえ二台目の話に乗ってこなくても、僕には結香ちゃんが食らいつくネタがある。


「ねえ結香ちゃん、 ○北先生がね……」


耳元で囁くだけで、がばっと顔をあげた。顔を赤らめて耳を押さえたのもカワイイけれど、話の内容に興味があるのは目を見ればわかる。
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