PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―


「煥先輩……」



わたしは何を言おうとしたんだろう? お礼?


それとも。



続きを阻むように、冷淡な声が降ってきた。



「傷を治すチカラ、癒傷《ナース》ですか。致死的な傷さえふさいでしまうとは驚異的です。

それにしても、王子さまのキスでお姫さまが生き返るなんてね。まるでおとぎ話だ」



煥先輩がわたしの体を離した。


立ち上がって身構えようとして、ふらつく。


わたしの代わりに痛んだ胸を押さえている。



海牙さんが右手を振り上げた。


黒い刃に月の光が映り込む。



「煥くんは違反者じゃないでしょうけどね」



ツルギの姿の玄獣珠が、煥先輩の胸を貫いた。


満月の下の公園の景色が掻き消えた。


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