Heaven~第一章~
「ったく、可愛くねーな」

それでも学はちゃんと向き合ってくれる。

「さっきは店からだから、椿が心配するようなことじゃねーよ」

「別に心配なんてしてないよ」

「そ、泣きそうな顔してたけど」

「してないよ」

学を叩こうと手を上げると、学にその手を掴まれ「痛いの嫌い」と言って私の手を離そうとしない。

「ちょっと離してよ」

「やだよ。また叩かれたら嫌だからな」

「叩かないよ」

「ダメ」

離そうとしない学の手から学の体温を初めて感じた。

一緒に居るのに学は私には触れようとしなかった。
人の体温を感じることでしか、存在を確認が出来なかった私には、一緒に居ても何を言われてもずっと学の視界には私が存在しないんだと思っていた。




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