この感情を僕たちはまだ愛とは知らない
04すれ違う心
いつもの時間、いつもと変わらないバイクの音
駅前のコンビニにやる気のない声がする
「うっす律
どうしたぁ?浮かない顔して」
「別に」
「んでそのご執心の彼女とはどうよ?」
「彼女ねぇ
俺の勘違いかも」
「はあ?」
「声デカいってマジで」
「ああ悪い律」
「させてくれてもキス止まり」
「なんだよ、まだしてねえのかよ?」
「させてくれないんだよ」
「強引にしちゃえよ」
「それじゃあ意味ないだろ」
「したくてしようがないんだろ律は」
「もう限界だよ正直」
「ずいぶん抱いてないのか?」
「言い方が卑猥」
「いいから答えろって
最近やったのは?」
「1ヶ月前かな
別の女と」
「律おまえ頭おかしいだろ?
おまえぐらいの年ならしたい盛りだろ」
俺は棚を整理しながら曖昧に答えていた
「まあな」
「んで今の女は幾つなんだよ?」
「知らね」
「はあ?」
「だから声デカいって修司」
「おまえ以外に婆ちゃんでも抱けるんじゃないか?」
「うるさい
ちょい悪い、タバコ吸ってくる」
「はあ?おまえ来たばかりだぞ」
「1日吸ってないんだよこっちは」
「おまえ大丈夫かマジで?」
「なんとかな」
「いい加減、白状しちまえよ」
「何を?」
「ヤタガラスのこと」
「修司」
「わかったから怖い顔すんなよ」
まるで猫を追い払うかのようにされ俺はバックヤードでタバコに火をつけた
スマホを確認する
梨花
遊びたい時に遊ぶ女の名前
ため息をついてスマホを置いた
すると着信がして慌てた
「律···ごめんね」
一瞬、誰かわからなかった
「麻衣?」
「うん」
「何が?」
「律のこと嫌いじゃないからおやすみ」
言葉が出なかった
スマホを置いてタバコを灰皿に押しつけて店に戻った
「いい女紹介してやろっか?」
「いいよ別に
そこまで飢えてない」
「さっきまでがっついてた狼リツくんはどこへ?」
「さあな」
そのまま明け方まで仕事をして麻衣のマンションに戻った
玄関を抜けて麻衣の寝室に忍び込んだ
まだ眠ってる彼女の横にそっと潜り込んでキスをした
「律···?」
「寝てていいから」
こんなの反則かもしれない
泣かせてしまうかもしれない
でも衝動は止まらない
もっと俺を欲しがればこんなことしなくていいのに
そっと抱きしめた
「優しくできるかわかんないけど」
「律···していいよ」
反則だろ···そんなかわいい顔
「気が逸れた」
「ウソ」
私は律の首に絡めた腕に力をいれて引き寄せた
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