恋する歌舞伎
と、この家に源氏方の使者・梶原景時(かじわらかげとき)が家来を従えやってくる。

源氏は平家を根絶やしにしようとしているため、平家の残党である維盛の首を求めて来たのだ。

梶原は弥左衛門に

「維盛の首を差し出せ」

と命じるが、そこへ息子の権太が、縛り上げた若葉の内侍親子を引き連れやってくる。

そして「維盛の首だ」とすし桶を差し出すではないか。

梶原はその首を「維盛の首に間違いない」と判断し、権太に褒美の陣羽織を与え、生け捕りにした若葉の内侍親子と共に去っていく。

黙っていられないのは父の弥左衛門。

彼は先般、梶原から維盛の首を差し出すよう命令されており、困った果てに偶然見つけた別人の死骸を切断し、ニセ首として差し出そうとすし桶の中に隠していたのだ。

これまで綿密に立てていた計画が、不良息子によって全て台無しにされたのだ。

弥左衛門は、とうとう権太を刀で斬ってしまう。

実の父に手を下され、意識が遠のく中、権太が絞り出した真実は誰も予想しないものだった。



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