恋する歌舞伎
先日湯島天神の境内で、定火消と大名火消・「加賀鳶」(※1)との間で大きな喧嘩があった。

それから数日後の今日、決着をつけようと加賀鳶の面々が今にも敵方へ飛びかかろうと勢揃いし、名乗りを上げている。

そこへ止めに入ったのは加賀鳶の頭・梅吉(うめきち)。

もしこの先を進むのなら、自分を殺してから行けと座り込む。

更に兄貴分の松蔵(まつぞう)も加勢するので、加賀鳶の若い者たちは引き上げていく。

所変わってここは日の暮れたお茶の水。

百姓の太次右衛門は所用で江戸にやってきたのだが、急に腰が痛み出し土手際に座り込んでいた。

そこへ運良く按摩(あんま)が通ったので、地獄で仏と腰をさすってもらうことにする。

しかし親切そうに見えたこの按摩の正体は道玄(どうげん)というかなりのワル。

太次右衛門が大金を持っていると知ると、殺した上で金を奪う事に成功し、喜んで帰っていく。

偶然通りかかった加賀鳶の松蔵が、道玄の落とした煙草入れを拾うのも知らずに・・・。


※1江戸では頻繁に家事が起こるので、その対策として、定火消(武家の屋敷を守る組織)・大名火消(幕府の要所を守る組織)・町火消(町家を守る火消)が置かれた。「加賀鳶」とは加賀藩前田家お抱えの火消の俗称。
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