恋する歌舞伎
それから3年後、舞台は鎌倉に移る。

お富はといえば、助けられた多左衛門という男の妾となり暮らす日々。

ある日お富の家へ、蝙蝠安(こうもりやす)と呼ばれるゴロツキが、全身傷だらけの男と金をねだりにやってくる。

実はこの傷だらけの男は変わり果てた与三郎。

3年前、源左衛門から体に受けた傷は34カ所にも渡り、その上実家からは勘当。

今はならず者になり下がり、金を無心に来てみたが、そこはかつて命がけで愛し合ったお富の家だったのだ。


与三郎にとっては、死に別れたと思ったあの日から片時も忘れたこともなかった恋人が、商人の愛人として優雅な暮らしを送っていることが腹立たしくてたまらない。

恨みつらみをぶつけ、お富をなじる与三郎。そこへ折よく多左衛門が帰ってくる。



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