恋する歌舞伎
四カ月後、ほとぼりも冷めたとみて次郎左衛門は再び廓に遊びに来る。

廓の者たちもあの事件以来、すっかり姿を見せないことを心配していたが、恨んでいる様子がないことに安堵する。

八ッ橋も、自分のしたことは申し訳ないと思いつつも、「あの次郎左衛門さんなら許してくれる」とどこかで思っていたのかもしれない。

疑うこと無く2人きりになるが、次郎左衛門に持参の刀・籠釣瓶で無惨にも斬られてしまうのだった。


タイトルにもなった“籠釣瓶”とは人を狂わす力を持った宝刀の名前。

可愛さ余って憎さ百倍。八ッ橋を手にかけた後「籠釣瓶は良く斬れるな」と、何かに憑かれたようにつぶやく次郎左衛門。

一途な人ほど、キレると何をしでかすかわからない。

恋ゆえに、また妖刀を手にしたことによって狂わされた男女の運命を誰も変えることは出来ないのだった。





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