恋する歌舞伎
翌日、店の2階で忠兵衛が寝ているところ、廓へやってきたのは八右衛門(はちえもん)。

金持ちだがいけすかないこの男も梅川を狙っていて、身請けをしようと店へやってきたのだ。

その傲慢な態度は店でも評判が悪く、仲居たちの対応もそっけない。

それでも図太く「梅川の身の代だ」と大金を座敷にポンと放るが、男気な店の主人は「忠兵衛さんが梅川を身請けすることになっているからこの金は受取れない」と突っ返す。

廓の皆々が忠兵衛ばかり贔屓をし、自分だけが嫌われることが気に食わない八右衛門は「あいつは田舎百姓の倅。そんな大金が用意出来るはずもない」と笑う。

一部始終を陰で聞いていた忠兵衛はとうとう堪忍袋の緒が切れ、八右衛門のもとへ「金ならある!」と飛び出していく。


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