恋する歌舞伎
名前から連想できる通り、お柳の正体は人間に姿を変えた柳の木の精であったのだ!

話は前世にさかのぼる。

その昔、紀州の梛(なだ)の木と、柳の木とが、枝を伸ばして絡み合う<連理の木>になっていた。

この連理の形は男女の交わりにも似たもので、その光景を見た山伏の蓮華王坊(れんげおうぼう)は、「修行場にこんなものがあってはよくない!」と二本の枝を切り離してしまった。

梛の木はその後、人間・平太郎に生まれ変わったが、柳の木は生まれ変わることが出来なかった。

そこで柳の木は平太郎の妻になるために、お柳という美しい女に姿を変えて現世に現れ、めでたく再び結ばれたのだった。
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