恋する歌舞伎
平治の乱で、源義朝は平清盛に敗れ、源氏は没落した。

義朝に愛されていた、美女と名高い常盤御前は、義朝死後すぐに仇である清盛の妾となり、さらに今では公家の一條大蔵長成(いちじょうおおくらながなり)の妻となり、一條家の館で優雅に暮らしている。

都合のいい方へ軽々と乗り換える常盤御前に対し源氏の人々は「常盤御前は義朝様とあれほど愛し合っていたのに、もう忘れたのか」「源氏再興のお気持ちはないのか」とやきもきしている。

とうとう我慢ならず、義朝の家臣、吉岡鬼次郎(きじろう)と妻のお京(きょう)は、大蔵卿の館にしのびこんで常盤御前の胸の内を確かめようと作戦を練る。

この大蔵卿という人物は、毎日能・狂言に明け暮れており、世間から「阿呆」のレッテルを張られている。

二人はそのことを利用して、お京を女狂言師として大蔵卿に召し抱えさせ、常盤に近づくという計画を立て、実行。

作戦通り、屋敷に召し抱えられたお京はその日から潜入捜査を始める。

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