恋する歌舞伎
誰もいなくなった屋敷にやってきたのは、白髪で足取りもおぼつかなくなり、すっかり変わった姿の伊織。

37年ぶりの我が家で懐かしそうにくつろぐ。

そこへやってきたのは伊織がいない間、筑前国黒田家の奥方のもとで仕えてきたるん。

年老いたために、顔を合わせてもお互い気づかなかったが、伊織の鼻を触る癖は変わっておらず、すぐにるんは夫だと気づく。

再会の感動を分かち合い、37年の時間の経過をしみじみと語り合う二人。

離ればなれになり、事件があり、更に子を疱瘡で亡くしと、さまざまな哀しみを乗り越えてきた。

「余生を送るのではない。生まれ変わって新しい暮らしを始めるのだ」
と伊織がいうように、待ちに待った満開の桜の下で、二人の時間はこれから動き出すのだった。


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